遺産分割協議書は、不動産は登記簿どおりの地番・家屋番号、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで正確に記載する必要があります。記載に不備があると、法務局での名義変更や金融機関での手続きが受理されません。本記事では、不動産・預貯金・株式それぞれの記載例と、よくある不備のパターンを解説します。
遺産分割協議書の基本構成
遺産分割協議書には、法律で定められた書式はありませんが、法務局や金融機関で受理されるためには以下の項目が必須です。
- 被相続人の情報:氏名・本籍地・最後の住所地・生年月日・死亡日
- 相続人全員の合意文:「相続人全員で遺産の分割について協議し、以下のとおり合意した」旨
- 各財産の記載と取得者:財産ごとに「誰が何を取得するか」を具体的に記載
- 「本協議書に記載なき遺産」の条項:記載漏れの財産の取り扱い
- 作成日・作成通数
- 相続人全員の署名・実印の押印
不動産の記載例
不動産は登記簿(登記事項証明書)に記載されているとおりに記載します。住所表記(「松本市○○町1-2-3」)ではなく、登記簿の地番・家屋番号を使用してください。
土地の記載例
以下の土地は、相続人 ○○○○ が取得する。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 所在 | 長野県松本市○○町 |
| 地番 | 123番4 |
| 地目 | 宅地 |
| 地積 | 200.50平方メートル |
建物の記載例
以下の建物は、相続人 ○○○○ が取得する。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 所在 | 長野県松本市○○町 123番地4 |
| 家屋番号 | 123番4 |
| 種類 | 居宅 |
| 構造 | 木造瓦葺2階建 |
| 床面積 | 1階 80.25平方メートル / 2階 60.50平方メートル |
注意:登記簿と1文字でも異なると法務局で補正を求められます。必ず登記事項証明書の原本を見ながら記載してください。
預貯金の記載例
以下の預貯金は、相続人 ○○○○ が取得する。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 金融機関名 | ○○銀行 |
| 支店名 | 松本支店 |
| 口座種別 | 普通預金 |
| 口座番号 | 1234567 |
金額は記載しないのが一般的です。相続開始後も利息が発生するため、金額を固定すると実際の残高と差異が生じます。「○○銀行松本支店の普通預金口座(口座番号1234567)の全額」という表記が実務的です。
株式・有価証券の記載例
以下の有価証券は、相続人 ○○○○ が取得する。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 証券会社名 | ○○証券 |
| 口座番号 | 12345678 |
| 銘柄 | 株式会社□□□ 普通株式 |
| 株数 | 1,000株 |
上場株式は銘柄コード(証券コード)も併記すると確実です。投資信託の場合は、ファンド名と口数を記載します。
「本協議書に記載なき遺産」の条項が重要な理由
遺産分割協議書には、以下の条項を必ず入れてください。
「本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、相続人 ○○○○ が取得する。」
相続財産の全容を把握するのは困難で、協議書作成後に新たな財産(未届の預金口座、忘れていた保険など)が見つかることは珍しくありません。この条項がないと、新たな財産が見つかるたびに再度協議書を作成する必要があり、相続人全員の署名・実印が再び必要になります。
金融機関に受理されない不備パターン
| 不備のパターン | 具体例 | 対策 |
|---|---|---|
| 不動産の表記が住所 | 「松本市○○町1-2-3」と記載 | 登記簿の地番・家屋番号で記載する |
| 口座情報の不備 | 支店名や口座番号が欠落 | 通帳または金融機関への照会で正確な情報を取得 |
| 相続人の署名漏れ | 相続人の一人が署名していない | 相続人全員の署名・実印を確認 |
| 印鑑証明書の期限切れ | 発行から6か月以上経過 | 金融機関の期限を事前確認(3か月・6か月など) |
| 被相続人の特定不足 | 最後の住所地の記載がない | 本籍地・最後の住所地・生年月日・死亡日をすべて記載 |
| 修正液・修正テープの使用 | 誤記を修正液で消した | 訂正は二重線+訂正印で行う |
行政書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は自分で作成することも可能ですが、行政書士に依頼することで以下のメリットがあります。
- 形式チェック:法務局・金融機関の受理基準を満たす書式で作成
- 財産の網羅:相続財産の調査(残高証明書・名寄帳の取得など)から対応
- 相続人の確定:戸籍収集から法定相続人を確定
- 手続きの一括対応:協議書作成から金融機関・法務局への提出手続きまでサポート
特に不動産が複数ある場合や、相続人が遠方に分散している場合は、専門家に依頼することで手続きが大幅に効率化されます。
まとめ:正確な記載が手続きのスピードを決める
遺産分割協議書の不備は、手続き全体の遅延に直結します。不動産は登記簿のとおり、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで正確に記載し、「記載なき遺産」の条項を忘れずに入れてください。
相続手続き全体の流れについては、相続手続きの全体像|行政書士に依頼できることもあわせてご覧ください。
遺言・契約書作成のご相談はリーガルイーストへ
遺言書・死後事務委任契約・生前贈与契約書など法務書類の作成を、松本・長野・武蔵小杉・上越の4拠点で承っています。公証役場との調整・署名立会いまで行政書士が一貫対応いたします。初回のご相談は無料です。