口約束の贈与は、税務調査で否認される可能性が高くなります。年間110万円以内の贈与でも、贈与契約書の作成を強くおすすめします。2024年の税制改正で生前贈与の加算期間が7年に延長されたことにより、贈与の事実を証明する書面の重要性はさらに増しています。本記事では、口約束の贈与が否認された事例、贈与契約書の必須項目とテンプレート、行政書士に依頼する場合の費用を解説します。
口約束の贈与が否認された事例
贈与契約は民法上、口頭でも成立します。しかし、税務調査の場面では「贈与があった」ことの立証責任は納税者側にあります。口約束では客観的な証拠が残らず、以下のように否認されるケースがあります。
- 親が子名義の口座に毎年100万円を振り込んでいたが、贈与契約書がなく、子が口座の存在を知らなかった → 名義預金と認定
- 「孫にあげた」と主張するが、通帳・印鑑は祖父母が管理 → 贈与の完了が認められない
- 毎年同額を10年間振り込んでいた → 「最初から1,000万円の贈与を分割した」として連年贈与と認定されるリスク
いずれも、贈与契約書があれば防げたケースです。
贈与契約書に書くべき必須項目
| 項目 | 記載内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 贈与者 | 氏名・住所 | 自署が望ましい |
| 受贈者 | 氏名・住所 | 自署が望ましい。未成年の場合は法定代理人も署名 |
| 贈与する財産 | 金銭の場合は金額、不動産の場合は登記簿の表示 | 具体的に特定する |
| 贈与の時期 | いつ贈与を実行するか | 振込日と一致させる |
| 契約日 | 契約書を取り交わした日 | 確定日付を取ると証拠力が高まる |
| 署名・押印 | 贈与者・受贈者双方 | 実印でなくても有効だが、実印+印鑑証明書で証拠力向上 |
贈与契約書のテンプレート(基本形)
以下は金銭贈与の基本的なテンプレートです。
贈与契約書
贈与者 ○○○○(以下「甲」という)と受贈者 ○○○○(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結する。
第1条 甲は、乙に対し、金○○万円を贈与することを約し、乙はこれを受諾した。
第2条 甲は、2026年○月○日までに、前条の金員を乙名義の下記口座に振り込む方法により引き渡す。
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
以上の契約を証するため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有する。
2026年○月○日
甲(贈与者)住所 氏名 印
乙(受贈者)住所 氏名 印
年間110万円以内でも契約書が必要な理由
年間110万円以下の贈与は基礎控除の範囲内で非課税です。しかし、非課税だからといって契約書が不要というわけではありません。
- 贈与の事実の証明:税務調査で「贈与は行われていない」と否認された場合、契約書がなければ反論する手段がない
- 連年贈与の否認リスク:毎年同額を贈与している場合、「最初から総額の贈与意思があった」とみなされるリスクがある。毎年個別の契約書を作成することで、各年の贈与が独立した行為であることを証明できる
- 相続開始前7年の加算対象の特定:いつの贈与が加算対象になるかを明確にするため
2024年税制改正(加算期間7年延長)の影響
2024年1月以降の贈与から、相続開始前の生前贈与の加算期間が3年から7年に延長されました。これにより、贈与の時期を正確に記録することの重要性が飛躍的に高まっています。
加算期間延長の主なポイントは以下のとおりです。
- 相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される
- 延長された4年分(4〜7年前)については、合計100万円までは加算されない(控除あり)
- 贈与の時期を証明する書面(贈与契約書)がなければ、税務署の認定に従うしかない
計画的な生前贈与を行い、毎回契約書を作成して時期と金額を記録しておくことが、7年ルールの下での最善の対策です。
行政書士に依頼する場合の費用と流れ
リーガルイーストでは、贈与契約書の作成を1通15,000円から承っています。
- ヒアリング:贈与の内容・目的・家族関係を確認
- 契約書の作成:法的要件を満たした贈与契約書を作成
- 確定日付の取得(オプション):公証役場で確定日付を付与し、作成日の証拠力を強化
- 納品:贈与者・受贈者各1通を納品
毎年の定期作成もお受けしており、「毎年12月に翌年分の契約書を作成」という形でご依頼いただく方もいらっしゃいます。
まとめ:15,000円の契約書が数百万円のリスクを防ぐ
贈与契約書は、作成費用に対する防御効果が極めて高い書類です。名義預金の否認・連年贈与の認定・加算期間の特定という3つのリスクを、1通の契約書で回避できます。
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